【宇宙のシステムアーキテクト】とは?未経験から目指す仕事内容・年収・キャリアパス

記事のまとめ
  • システムアーキテクトとは: 宇宙ミッションの全体像を描く「総合建築士」(家づくりで言えば、顧客の要望を設計図に落とし込む設計士)。
  • 主な業務は: どんな宇宙機を作るかの構想を練り、各専門エンジニアに指示を出して、技術的にまとめ上げること。
  • 向いている人は:
    • 物事を全体的に捉えられる人
    • 論理的に考えるのが好きな人
    • 複雑なパズルを解くのが好きな人。
目次
一言でいうと
システムアーキテクトとは,技術のオーケストラを指揮し、最適解を導き出す『設計の司令塔』
システムアーキテクトは、ロケットや人工衛星開発において、技術的な全体整合性を取る責任者です。 
プロジェクトマネージャ(PM)が「予算・スケジュール・人」を管理する「現場監督」だとすれば、システムアーキテクトは「どのような機能を持たせるか」「どのような構造にするか」を決める「設計主(アーキテクト)」にあたります。
宇宙機は、電源、通信、熱制御、構造など、全く異なる専門技術の塊です。それぞれの専門エンジニア(電気担当や構造担当など)が好き勝手に設計すると、重すぎて飛ばなかったり、熱で壊れたりしてしまいます。システムアーキテクトは、これら全てのバランスを見ながら、「君の部品はあと100g軽くして」「ここは熱が出るから配置を変えよう」といった調整を行い、一つのシステムとして機能するようにまとめ上げる、非常に重要で知的なポジションです。

具体的な業務内容

宇宙スキル標準を参考に、このロールが担う業務の代表例を紹介します。 全体を見渡す広い視野と、細かい技術要求を管理する緻密さが求められます。
  • [宇宙ミッション策定]
    • 「そもそも何のために宇宙に行くのか?」という目的を定義し、成功と言える基準(ゴール)を決める、プロジェクトの最上流業務です。
  • [概念設計(システム全体)]
    • 細かい図面を書く前に、「大まかにどんな形や大きさで、どんな機能を持たせるか」という全体構想を描きます。
  • [システム設計(システム全体)]
    • 構想を実現するために、「電源系にはこれくらいの重さを割り当てる」「通信系はこれくらいの電力を使う」といったルールを決め、各チームに指示を出します。
  • [プログラム計画策定]
    • 開発に必要な技術的なステップや、いつどのような検証(テスト)を行うかという計画を立てます。

必要なスキルと推奨資格

宇宙スキル標準では、この職種において専門的な知識からヒューマンスキルまで、多岐にわたる能力が定義されています。 技術的な「広さ」が求められるため、項目数が非常に多いのが特徴ですが、全てを一人で完璧にする必要はありません。

○○の求められるスキル

宇宙スキル標準では、この職種において専門的な知識からヒューマンスキルまで、多岐にわたる能力が定義されています。 技術的な「広さ」が求められるため、項目数が非常に多いのが特徴ですが、全てを一人で完璧にする必要はありません。

転職に有利な「地上の資格・経験」

一部はスキル標準でも参照されていますが、ここでは「標準外」のものも含め、未経験者が転職活動でアピールしやすい資格を参考として紹介します。
  • [システムアーキテクト試験(IPA)]
    • IT業界の国家資格ですが、要件定義やシステム全体の設計能力は宇宙開発のソフトウェア領域でも高く評価されます。
  • [PMP (Project Management Professional)]
    • PMと連携して動くため、マネジメントの共通言語を持っていることは強力な武器になります。
  • [TOEIC 700点以上]
    • NASAのドキュメントや海外の論文を参照する機会が多いため、英語の読解力は必須スキルです。

共通するやりがい・年収

やりがい

システムアーキテクトの仕事には、他では味わえない大きな3つの魅力があります。
  • 自分の頭の中で描いた構想が、実際の巨大なロケットや衛星となり、宇宙空間でミッションを達成します。ゼロからモノを作り上げる「生みの親」としての感動はひとしおです。
  • 相反する条件(「軽くしたい」けど「丈夫にしたい」など)を、技術的なアイデアと調整力で解決していくプロセスは、難解なパズルを解くような知的な面白さがあります。
  • あらゆる技術分野の専門家と会話をするため、幅広い知識が身につきます。「技術のジェネラリスト」として、エンジニアとして最高峰の視座を得ることができます。

年収

  • システムアーキテクトは、専門性が求められるため、宇宙業界の中でも「高水準」な傾向にあります。 高度な技術知識と全体をまとめる調整力の両方が必要なため、人材としての希少価値が非常に高く、プロジェクトマネージャ(PM)と同等、あるいはそれ以上の待遇で迎えられることも珍しくありません。特にIT業界などでシステム設計の経験がある人材は、即戦力として好条件が提示されやすいです。

※現在の「宇宙スキル標準」において具体的な年収額は公表されていません。詳細な待遇や業務内容は、「宇宙スキル標準」の公表次第、随時追加していきます。

未経験から目指すには

今はまだ宇宙に関する知識も資格もなくて大丈夫です。システムアーキテクトは「経験の積み重ね」がモノを言う職種です。まずは目の前の経験を活かしながら、段階的にステップアップしていきましょう。

未経験から目指すには(キャリアパス)

今はまだ宇宙に関する知識も資格もなくて大丈夫です。まずは目の前の経験を活かしながら、段階的にステップアップしていきましょう。
STEP
学習・準備
まずは「システムズエンジニアリング」という考え方に触れることから始めます。
  • アクション: 『システムズエンジニアリング入門』などの書籍を読む。IPAのシステムアーキテクト試験の勉強を通じて「要件定義」や「設計」のプロセスを体系的に学ぶ。
STEP
仕事にする
「完璧な知識」がなくても、ポータブルスキル(持ち運び可能な能力)を武器に飛び込みます。いきなり全体設計は難しいため、サブシステムの担当や、ソフトウェア領域から入ります。
  • アクション: 宇宙ベンチャーのソフトウェアエンジニアや、地上システムの設計担当として転職する。または、自動車や航空機業界で「調整役」のエンジニアとして経験を積む。
STEP
信頼される
現場で働きながら、自分の専門外の知識(電気担当なら熱や構造のこと)を吸収していきます。
  • アクション: 担当分野のリーダーになり、他部署とのインターフェース調整を積極的に引き受ける。「あの人に聞けば全体のことがわかる」という立ち位置を確立する。
STEP
全体を統括する
プロジェクト全体のシステムアーキテクトとして、ミッションの技術責任を負います。
  • アクション: 新規プロジェクトの技術責任者(チーフエンジニア)となり、ミッションコンセプトの策定から打ち上げまでをリードする。

システムアーキテクトへの転職を成功させるには

宇宙業界のシステムアーキテクトに最も必要なのは、「複雑な物事を整理し、全体最適を導き出すバランス感覚」です。 理系・文系という枠にとらわれる必要はありません。あなたがこれまでのキャリア(ITシステム開発、建築設計、プラントエンジニアリングなど)で培ってきた「顧客の要望を形にする力」や「矛盾する条件を調整して解決策を見つける力」は、そのまま宇宙ビジネスの現場で求められています。まずは自分の経験の棚卸しから始めてみましょう。
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