無線通信設計エンジニアとは?仕事内容・必要なスキル・キャリアパスを解説!

通信系システムエンジニアが決めた仕様に基づき、宇宙機のアンテナや無線機を実際に設計・開発・試験する職種です。通信機器の設計経験を積みながら、通信系システムエンジニアやプロジェクトリーダーへとキャリアを広げていきます。
※推定年収は、関連職種の公的統計および宇宙業界の直近の求人市場データに基づく推計値です。経験やスキル等により実際の金額は異なります。
記事のまとめ
  • 無線通信設計エンジニアとは 宇宙機のアンテナや無線機を設計し、周波数調整や免許申請まで担う職種です。
  • 無線通信設計エンジニアに求められるスキルは、ネットワーク設計とEMC試験です。
  • 無線通信設計エンジニアの平均年収は600万円
目次
無線通信設計エンジニアの主な仕事は、「通信系システムエンジニアが決めた仕様をもとに、宇宙機に搭載するアンテナや無線機を実際に設計・開発し、無線周波数の設計や免許申請まで一貫して担当すること」です。
ここでは、無線通信設計エンジニアの仕事内容や、無線通信設計エンジニアの役割について解説していきます。
無線通信設計エンジニアは、宇宙機と地上局をつなぐ通信機器を実際に設計・開発・試験する仕事です。
アンテナや無線機のハードウェア設計に加え、無線周波数(電波の周波数帯)の設計・解析・評価も担当します。さらに、使用する周波数の調整や、衛星に搭載する無線局の免許申請といった手続き業務も行います。

無線通信設計エンジニアは、宇宙と地上をつなぐ通信機器を「形にする」開発現場の中核を担う存在です。
たとえば、天気予報の衛星画像やGPSの位置情報が地上に届くのは、衛星に搭載されたアンテナと無線機が正しく動作しているからです。通信機器の設計が不十分であれば、どれだけ優れた仕様を立てても宇宙と地上のデータ通信は実現しません。

宇宙スキル標準を参考に、このロールが担う業務を紹介します。
通信系の設計
通信系システムエンジニアが決めた仕様に基づき、アンテナや無線機の回路・構造を設計する業務です。
たとえば、宇宙機と地上局間の通信回線に最適なアンテナ形状や無線機の回路構成を検討します。電磁波環境や宇宙特有の温度条件を考慮しながら、求められる通信品質を実現する設計を行います。
通信系の解析
設計したアンテナや無線機が求められる通信性能を満たしているかを、コンピュータシミュレーションで検証する業務です。
たとえば、宇宙空間の電磁波環境を仮想的に再現し、アンテナの指向性や無線周波数の信号品質を分析します。解析結果をもとに設計を改善するサイクルを繰り返します。
通信系の製造
設計図に基づき、アンテナや無線機の部品を実際に製造・組み立てる業務です。
たとえば、適切な材料と加工方法を選び、高精度な通信部品を製作します。さらに部品同士の組み付けを行い、通信システム全体を完成させます。電子部品を多く扱うため、静電気対策など品質管理にも注意を払います。
通信系の試験
設計・製造した通信機器が、求められる機能・性能と安全性を満たしているかを実際に試験で検証する業務です。たとえば、アンテナや無線機の送受信が設計通りに動作するか確認する機能試験や、他の機器への電磁干渉がないか検証するEMC試験を実施します。試験結果をもとに設計の最終調整を行います。
前職でこんな仕事をしていた方におすすめ!
  • 通信機器メーカー/放送局などでアンテナや無線機のハードウェア設計をしていた人
  • 携帯キャリア/電子機器メーカーなどでRF回路設計や高周波回路の評価をしていた人
  • 通信事業者などで無線局の免許申請や周波数調整の手続き業務を担当していた人
無線通信設計エンジニアの仕事には、他では味わえない大きな魅力・やりがいがあります

この仕事の一番の魅力は、宇宙と地上をつなぐ通信機器を自分の手で「形にする」ことができる点です。
仕様書に書かれた通信性能を、実際のアンテナや無線機として具現化する設計力が試されます。たとえば、自分が設計したアンテナが宇宙空間から地上へデータを正確に届けるとき、設計の正しさが証明される瞬間です。無線周波数の設計から免許申請まで幅広く担える、技術と手続きの両方を扱う仕事といえるでしょう。

この仕事のやりがいは、自分が設計した通信機器が宇宙空間で実際に稼働し、社会インフラを支え続けることです。
気象衛星の画像データや、災害時の緊急通信が途切れず届くのは、アンテナや無線機が設計通りに動作し続けているからです。「自分が設計した通信機器が、宇宙で毎日データを届けている」——そう実感できることが、この仕事ならではの大きなやりがいです。
宇宙スキル標準を参考に、この職種が担うスキルを紹介します。
求められるスキルをまとめると、 「アンテナや無線機のハードウェア設計から製造・EMC試験まで一貫して担う『無線通信設計・検証系』のスキル」が多く求められます
モデルベース開発
コンピュータ上のモデルを使い、設計と検証を効率的に進めるスキル

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ネットワーク設計・解析
通信機器間のデータ連携システムを設計・分析するスキル

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電気的インターフェース設計・解析
異なるシステム間の電力供給や信号伝達を設計するスキル

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信頼性設計
宇宙機が壊れにくく安定して動く仕組みを設計するスキル

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安全性設計
宇宙機を安全に使用するための仕組みを設計するスキル

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宇宙環境条件の反映(設計・解析)
宇宙空間の温度・放射線・電磁波を考慮した設計を行うスキル

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アッセンブリ
複数の部品やデバイスを組み立てて完成品を製造するスキル

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接着作業
接着剤を使って部品同士を適切に固定するスキル

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塗装作業
宇宙機用の特殊塗料を使い、構造部材に塗装を施すスキル

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インサート処理作業
ボルトの雌ネジ部分を補強・固定する処理を行うスキル

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リベット作業
リベットを使って構造部品を機械的に結合するスキル

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ネジ締め付け作業
過酷な環境を考慮し、適切なネジで緩みなく締め付けるスキル

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ネジ固着作業
接着剤などを使い、ネジを完全に固着させるスキル

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カシメ作業
電線やコネクター端子を適切に圧着・接合するスキル

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電子部品静電防止作業
静電気による電子部品の破損を防止する処置を行うスキル

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機能性能試験
宇宙機が設計通りの機能・性能を発揮するか検証するスキル

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EMC試験
電磁ノイズによる機器の誤作動がないか検証するスキル

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放射線試験
宇宙放射線に対する電子機器の耐性を確認するスキル

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転職に有利な「地上の資格・経験」 一部はスキル標準でも参照されていますが、ここでは「標準外」のものも含め、未経験者が転職活動でアピールしやすい資格を参考として紹介します。
無線通信設計エンジニアに役立つ資格

  • 陸上無線技術士
  • 総合無線通信士
  • 電気通信主任技術者
  • 基本情報技術者試験
  • 応用情報技術者試験
  • EMC設計技術者資格
  • 信頼性技術者資格認定試験
  • CCNA(シスコ技術者認定)
  • アンテナ技術者資格認定
  • E検定
無線通信設計エンジニアの年収は、携わるプロジェクトの規模や種類によって変動します。政府主導の大規模プロジェクト(官需)と民間の商業プロジェクト(民需)では予算規模が異なり、年収水準にも差が出る傾向があります。
また、通信衛星やデータ中継衛星など、担当する衛星の種類や通信方式の複雑さによっても年収に影響があります。経験を積んで通信系システムエンジニアやPMへステップアップすることで年収はさらに上がっていきます。
STEP
現場で基礎を身につける
先輩エンジニアのもとで、アンテナや無線機の設計補助や試験データの整理を担当します。無線通信の基礎理論と、宇宙特有の電磁環境や周波数調整の実務について、現場で学んでいきます。
STEP
主担当として独り立ちする
特定の通信機器(たとえばアンテナの回路設計や無線周波数の解析・評価など)を自力で担当できるようになります。設計から試験、周波数調整や免許申請の手続きまで一連の業務を主導します。
STEP
専門リーダーとしてチームを率いる
複数の設計エンジニアを指導しながら、通信機器全体の設計品質を管理するポジションに就きます。通信業界でいえば「RF設計担当からRFシステムリーダーへ」の昇格に近い変化です。通信系システムエンジニアとして技術要件の整理や仕様決定も担うようになります。
STEP
組織・プロジェクト全体を統括する
通信系にとどまらず、プロジェクト全体を見渡すポジションに就きます。宇宙スキル標準における「システムアーキテクト」や「プロジェクトマネージャ(PM)」として、構造・電気・制御など複数の専門領域をまたいだ技術判断や開発計画の統括を担います。

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宇宙業界の無線通信設計エンジニアに最も必要なのは、「アンテナや無線機の設計・試験を通じて、通信品質を確保する技術力」です。
RF回路設計やアンテナ設計の経験がある方はもちろん、無線局の免許申請や周波数調整に携わった経験がある方も即戦力として活躍できます。「無線機器のハードウェア設計経験」や「高周波回路の評価・EMC試験の実務経験」は、宇宙業界でもそのまま強みになります。まずは宇宙機の通信機器がどのような構成で動いているのかを調べることから始めてみましょう。
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