熱制御系設計エンジニアとは?仕事内容・年収・キャリアパスを解説

熱制御系システムエンジニアが決めた仕様に基づき、宇宙機の温度管理の仕組みを実際に設計・検証し、地上試験や軌道上データで性能を確認する職種です。熱設計の実務経験を積みながら、熱制御系システムエンジニアやプロジェクトリーダーへとキャリアを広げていきます。
※推定年収は、関連職種の公的統計および宇宙業界の直近の求人市場データに基づく推計値です。経験やスキル等により実際の金額は異なります。
記事のまとめ
  • 熱制御系設計エンジニアとは 宇宙機の温度管理の仕組みを設計し、試験で性能を検証する職種です。
  • 熱制御系設計エンジニアに求められるスキルは、熱設計・解析と熱試験です。
  • 熱制御系設計エンジニアの平均年収は600万円
目次
熱制御系設計エンジニアの主な仕事は、「熱制御系システムエンジニアが決めた仕様をもとに、宇宙機の断熱材やヒーター、放熱面などを実際に設計し、地上試験や打ち上げ後の軌道データを使って温度管理の性能を確認すること」です。
ここでは、熱制御系設計エンジニアの仕事内容や、熱制御系設計エンジニアの役割について解説していきます。
熱制御系設計エンジニアは、宇宙機の温度管理の仕組みを実際に設計・検証・試験する仕事です。断熱材の配置やヒーターの出力設定、放熱面の面積・材質を具体的に決定し、シミュレーションで温度分布を確認します。さらに、地上での熱真空試験や、打ち上げ後の軌道上データの分析を通じて、搭載機器が許容温度の範囲で正常に動作するかを最終検証します。

熱制御系設計エンジニアは、宇宙機の温度管理を「形にする」開発現場の中核を担う存在です。
たとえば、気象衛星やGPS衛星は日なたで100℃以上、日かげでマイナス100℃以下という極端な温度にさらされます。温度管理の設計が不十分であれば搭載機器が故障し、天気予報やナビゲーションが使えなくなります。

宇宙スキル標準を参考に、このロールが担う業務を紹介します。
熱制御系の設計
熱制御系システムエンジニアが決めた仕様に基づき、断熱材やヒーター、放熱面などの具体的な配置と仕様を設計する業務です。たとえば、搭載機器ごとの発熱量と許容温度を考慮し、断熱材の厚さやヒーターの出力、放熱面の面積を決定します。打ち上げから軌道上での運用まで、あらゆる温度環境に対応できる設計を行います。
熱制御系の解析
設計した温度管理の仕組みが求められる性能を満たしているかを、コンピュータシミュレーションで検証する業務です。
たとえば、打ち上げ時や軌道上の温度環境を仮想的に再現し、各部品や機器の温度変化を詳細に分析します。解析結果をもとに断熱材の厚さや放熱面の面積を調整し、設計を最適化します。
熱制御系の製造
設計図に基づき、温度管理に関わる部品を実際に製造・組み立てる業務です。
たとえば、断熱材の加工や放熱板の製作、ヒーターの取り付けを、適切な材料と加工方法を選んで行います。さらに、製造した部品を宇宙機本体に組み付けます。温度環境に直結する部品のため、材料の品質管理が特に重要です。
熱制御系の試験
設計・製造した温度管理の仕組みが、想定される温度環境下で正常に動作するかを実際に試験で検証する業務です。
たとえば、宇宙空間の真空・高低温環境を再現した試験設備で、搭載機器が許容温度の範囲内に保たれるか確認します。打ち上げ後には軌道上の実測データを分析し、設計が正しかったかを最終確認します。
前職でこんな仕事をしていた方におすすめ!
  • 自動車/半導体/家電などで放熱設計や熱流体シミュレーションをしていた人
  • 空調メーカー/プラントなどで冷却システムや熱交換器の設計・試験をしていた人
  • 材料メーカー/試験機関などで断熱材や耐熱材料の評価・試験をしていた人
姿勢制御系設計エンジニアの仕事には、他では味わえない大きな魅力・やりがいがあります

この仕事の一番の魅力は、宇宙空間の極端な温度環境から宇宙機を守る仕組みを自分の手で「形にする」ことができる点です。断熱材の配置やヒーターの出力設定、放熱面の設計を自ら行い、地上試験でその性能を実証します。たとえば、エアコンのない宇宙空間で精密機器の温度を許容範囲に収める設計は、熱制御エンジニアならではの高度な技術です。宇宙ならではの極限環境に自分の設計で挑む、技術者冥利につきる仕事といえるでしょう。

この仕事のやりがいは、自分が設計した温度管理の仕組みが宇宙空間で実際に機能し、宇宙機を何年も守り続けることです。
打ち上げ後の軌道上データで、自分が設計した断熱材やヒーターが想定通りの温度管理を実現していることを確認できます。「自分の設計が宇宙で正しく機能している」と実測データで証明される瞬間は、この仕事ならではの大きなやりがいです。
宇宙スキル標準を参考に、この職種が担うスキルを紹介します。
求められるスキルをまとめると、 「断熱材・ヒーター・放熱面の設計から製造・熱真空試験まで一貫して担う『熱制御実装・検証系』のスキル」が多く求められます
モデルベース開発
コンピュータ上のモデルを使い、設計と検証を効率的に進めるスキル

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熱/熱制御設計・解析
部品やシステム全体の温度を管理する設計・解析を行うスキル

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材料設計・解析
使用する材料の特性を評価し、最適な材料を選定するスキル

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信頼性設計
宇宙機が壊れにくく安定して動く仕組みを設計するスキル

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安全性設計
宇宙機を安全に使用するための仕組みを設計するスキル

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宇宙環境条件の反映(設計・解析)
宇宙空間の温度・放射線・電磁波を考慮した設計を行うスキル

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アッセンブリ
複数の部品やデバイスを組み立てて完成品を製造するスキル

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接着作業
接着剤を使って部品同士を適切に固定するスキル

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塗装作業
宇宙機用の特殊塗料を使い、構造部材に塗装を施すスキル

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インサート処理作業
ボルトの雌ネジ部分を補強・固定する処理を行うスキル

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リベット作業
リベットを使って構造部品を機械的に結合するスキル

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ネジ締め付け作業
過酷な環境を考慮し、適切なネジで緩みなく締め付けるスキル

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ネジ固着作業
接着剤などを使い、ネジを完全に固着させるスキル

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カシメ作業
電線やコネクター端子を適切に圧着・接合するスキル

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電子部品静電防止作業
静電気による電子部品の破損を防止する処置を行うスキル

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熱試験
宇宙空間の高低温・真空環境を再現し、温度管理性能を検証するスキル

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放射線試験
宇宙放射線に対する電子機器の耐性を確認するスキル

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転職に有利な「地上の資格・経験」 一部はスキル標準でも参照されていますが、ここでは「標準外」のものも含め、未経験者が転職活動でアピールしやすい資格を参考として紹介します。
熱制御系設計エンジニアに役立つ資格

  • 技術士(機械、航空・宇宙)
  • エネルギー管理士
  • 機械設計技術者試験
  • 危険物取扱者
  • 公害防止管理者(大気関係)
  • CAE技術者資格
  • 伝熱工学資格検定
  • 信頼性技術者資格認定試験
  • 材料試験士
  • 3次元CAD利用技術者検定
熱制御系設計エンジニアの年収は、携わるプロジェクトの規模や種類によって変動します。政府主導の大規模プロジェクト(官需)と民間の商業プロジェクト(民需)では予算規模が異なり、年収水準にも差が出る傾向があります。
また、ロケットと衛星では温度環境や設計の複雑さが異なり、専門性の深さも年収に影響します。経験を積んで熱制御系システムエンジニアやPMへステップアップすることで年収はさらに上がっていきます。
STEP
現場で基礎を身につける
先輩エンジニアのもとで、熱解析モデルの作成補助や試験データの整理を担当します。断熱材や放熱面の基礎知識と、宇宙特有の温度環境(真空中の熱伝達や放射冷却など)の特性を実務を通じて学んでいきます。
STEP
主担当として独り立ちする
特定の熱制御領域(たとえば搭載機器の断熱設計やヒーター制御の設計など)を自力で担当できるようになります。温度シミュレーションから熱真空試験の実施、軌道上データの分析まで一連の設計・検証業務を主導します。
STEP
専門リーダーとしてチームを率いる
複数の設計エンジニアを指導しながら、熱制御系全体の設計品質を管理するポジションに就きます。半導体業界でいえば「放熱設計担当から熱マネジメントチームリーダーへ」の昇格に近い変化です。熱制御系システムエンジニアとして技術要件の整理や仕様決定も担うようになります。
STEP
組織・プロジェクト全体を統括する
熱制御系にとどまらず、プロジェクト全体を見渡すポジションに就きます。宇宙スキル標準における「システムアーキテクト」や「プロジェクトマネージャ(PM)」として、構造・電気・推進など複数の専門領域をまたいだ技術判断や開発計画の統括を担います。

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宇宙業界の熱制御系設計エンジニアに最も必要なのは、「温度環境をシミュレーションし、試験で設計の正しさを証明する技術力」です。放熱設計や熱流体シミュレーションの経験がある方はもちろん、冷却システムや断熱材の評価に携わった経験がある方も即戦力として活躍できます。「CAEを使った温度解析の経験」や「高低温環境での試験評価の実務経験」は、宇宙業界でもそのまま強みになります。まずは宇宙機がどのような温度環境にさらされるのかを調べることから始めてみましょう。
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