組み込みハードウェアエンジニアとは?未経験から目指す仕事内容・年収・キャリアパス

記事のまとめ
  • 組み込みハードウェアエンジニアとは
    • 宇宙機の「脳」や「神経」となる専用コンピュータの基板や電子回路を、部品一つから選定して作り上げる「宇宙機の電子回路職人」です。
  • 組み込みハードウェアエンジニアの主な業務は
    • 仕様書に基づいて、実際に宇宙へ行くコンピュータの回路図を引き、試作品を作り、放射線やノイズに耐えられるかテストして完成させることです。
  • 組み込みハードウェアエンジニアに向いている人は
    • パソコンの自作や電子工作で、基板やチップを見るだけでワクワクする人
    • 「なぜ動かないのか」を測定器を使って徹底的に調べるのが好きな人
    • 0と1のデジタルの世界と、熱や電気の物理の世界を行き来できる人
目次
「データ処理系システムエンジニア」が「どんな性能のコンピュータが必要か」という設計図(仕様書)を描くのに対し、組み込みハードウェアエンジニアは、その設計図をもとに、実際にモノ(電子回路・基板)を作り上げる仕事です。

CPUやメモリ、FPGA(書き換え可能な論理回路)などの電子部品を選定し、それらを載せる基板(プリント配線板)を設計します。さらに、作った基板にプログラムを書き込んで正しく動くか確認したり、宇宙の放射線で誤動作しないかテストしたりと、ハードウェア開発の現場作業を担います。
地上の仕事で例えると…
家電製品の中に回路基板を設計して組み込む「家電メーカーの電子回路設計者」や、自動車のエンジン制御ユニットを作る「ECUハードウェア開発者」のような役割です。

組み込みハードウェアエンジニアの具体的な業務内容

宇宙スキル標準を参考に、このロールが担う業務の代表例を紹介します。
  • [データ処理系の設計]
    • 宇宙機に搭載するコンピュータの回路図を作成する業務です。「このCPUとメモリを繋ぐにはどういう配線が必要か」「ノイズを防ぐために部品をどう配置するか」を考え、CAD(設計ソフト)を使って具体的な基板データを製作します。
  • [データ処理系の解析]
    • 設計した回路が正しく動くか、シミュレーションを行う業務です。「電気信号のタイミングはずれていないか」「特定の部品が熱くなりすぎないか」などを事前に計算し、作り直しが発生しないように設計の精度を高めます。
  • [データ処理系の試験]
    • 完成した基板や機器が、宇宙環境で耐えられるかをテストする業務です。電波を出して他の機器の邪魔をしないか確認する「EMC試験」や、放射線を当てて壊れないかを確認する「放射線試験」など、宇宙ならではの厳しいチェックを行います。

組み込みハードウェアエンジニアの必要なスキルと推奨資格

求められるスキル

宇宙スキル標準では、この職種において専門的な知識からヒューマンスキルまで、多岐にわたる能力が定義されています。 専門用語も多いため、以下のボタン(リンク)からそれぞれの詳しい解説ページを確認してみてください。

スキル一覧

このロールに求められるスキルを一言で表すと、 「仕様書をもとに最適な電子部品を選んで回路を組み、過酷な宇宙環境でも誤動作しないタフなコンピュータ・ハードウェアを作り上げて実証する力」 です。

転職に有利な「地上の資格・経験」

一部はスキル標準でも参照されていますが、ここでは「標準外」のものも含め、未経験者が転職活動でアピールしやすい資格を参考として紹介します。
  • エンベデッドシステムスペシャリスト試験
    • 組み込みシステムのハードウェアとソフトウェア両面の知識を問われる高難易度資格です。これがあれば即戦力候補として強力にアピールできます。
  • ディジタル技術検定(制御部門・2級以上)
    • コンピュータの基礎となるデジタル回路や論理設計の知識を証明できます。未経験からのステップアップとして適しています。
  • E検定(電気・電子系技術検定)
    • 電子回路や半導体の知識など、ハードウェアエンジニアとしての基礎体力を客観的に示せるため、実務経験が浅い場合でも評価に繋がります。

共通するやりがい・年収

やりがい

組み込みハードウェアエンジニアの仕事には、他では味わえない大きな3つの魅力があります。
  • 「モノ」として残る達成感
    • 画面の中だけでなく、実際に自分が設計した緑色の基板や黒いボックスが、ロケットに乗って宇宙へ飛び立つ姿を見ることは、ハードウェアエンジニアならではの喜びです。
  • 技術の総合格闘技
    • 高速な信号処理、熱対策、ノイズ対策、放射線対策など、電気・電子・物理のあらゆる知識を駆使して「動かない」トラブルを解決していく面白さがあります。
  • 最先端デバイスへの挑戦
    • 最近の宇宙開発では、民生品の最新CPUやFPGAをいかに宇宙で使うかがトレンドです。新しいデバイス技術を積極的に取り入れ、宇宙仕様にカスタマイズしていく挑戦ができます。

年収

組み込みハードウェアエンジニアは、専門性が求められるため、宇宙業界の中でもスキルに応じて高くなる傾向にあります。 特に、FPGA(回路をプログラムできるチップ)の設計スキルや、EMC(ノイズ対策)の実務経験を持つエンジニアは地上でも不足しており、宇宙業界でも非常に高い市場価値があります。

※現在の「宇宙スキル標準」において具体的な年収額は公表されていません。詳細な待遇や業務内容は、「宇宙スキル標準」の公表次第、随時追加していきます。

未経験から目指すには

今はまだ宇宙に関する知識も資格もなくて大丈夫です。まずは目の前の経験を活かしながら、段階的にステップアップしていきましょう。
STEP
学習・準備
まずは「デジタル回路・マイコン」の基礎知識に触れることから始めます。 ArduinoやRaspberry Piなどのマイコンキットを使い、センサーを繋いでデータを読み取るなどの電子工作を通じて、回路とプログラムの関係を体感します。

アクション:電子工作で「Lチカ(LED点滅)」から始める、基本情報技術者試験でハードウェアの基礎を学ぶ。
STEP
仕事にする
「完璧な知識」がなくても、ポータブルスキル(持ち運び可能な能力)を武器に飛び込みます。 自動車部品、医療機器、産業用ロボットなどのメーカーで、電子回路の設計補助や評価・テスト担当として実務経験を積むことが、宇宙への確実なルートです。

アクション:製造業の「回路設計エンジニア」「評価エンジニア」に応募する。オシロスコープやテスターの使い方をマスターする。
STEP
信頼される
現場で働きながら、必要な知識や資格を身につけていきます。 回路図CADを使って自分で設計できるようになり、FPGAの記述言語(Verilog-HDLなど)や、ノイズトラブルへの対処法を習得します。

アクション:エンベデッドシステムスペシャリストに挑戦する、FPGA設計の実務経験を積む、EMC設計技術者の資格を取る。
STEP
全体を統括する
将来的には、ハードウェア開発チームのリーダーや、システム全体の電気設計を統括するマネージャーを目指します。 ハードウェアだけでなく、搭載するソフトウェアの要望も理解し、最適なシステム構成を提案できるエンジニアへと成長します。

アクション:プロジェクトマネージャー試験を受ける、電気系サブシステム全体の責任者を目指す。

組み込みハードウェアエンジニアへの転職を成功させるには

宇宙業界の組み込みハードウェアエンジニアに最も必要なのは、「動かない原因をハードとソフトの両面から論理的に突き止め、解決する粘り強さ」です。

理系・文系という枠にとらわれる必要はありません。あなたがこれまでのキャリアで培ってきた「趣味の自作PCでのパーツ選定知識」や「工場での設備保全・修理経験」は、そのまま宇宙ビジネスの現場でのトラブル対応力として活かすことができます。まずは自分の経験の棚卸しから始めてみましょう。
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